子供の頃から、彼は立派な王様になるように、と言われ続けてきた。

親からも、周りからも、そして、その時世の中で一番好きだった姉からも。

だから、期待に答えられるよう、彼は無理をしてでも頑張った。

農業について学び、商業について学び、剣術も、魔術も学んだ。

彼はどの分野においても優秀ではあったが、優秀すぎることはなかった。

彼の養育係りとしてついている水瀬侯爵は彼に対して「それで十分ですよ。あせらなくても大丈夫です」と言った。

しかし、彼はそれをよしとしなかった。

王様は誰よりも優れていなくてはいけない。彼はそう思ってしまっていた。

実際に、彼の姉が、剣術以外の分野において(剣術は父が「女性が武器なんて振り回すものではない」と禁止した) 全てに彼を上回っていたのも彼を追い込んだ一つだったのかもしれない。

しだいに、彼は笑わなくなった。

毎日、起きることと食べることと、勉強、訓練、それ以外のことをしないようになっていった。

そして、それは秋子がどれだけ止めても変わるものではなかった。

彼はただ、優秀であろうとしたのである。

それが王になるものの義務である、と。

しかし、それはある日変わった。

水瀬侯爵が用事で居ない日、公爵である相沢慎一が、自分の孫を連れて、秋子の代わりとしてやってきた。

その孫を連れてきた理由はただ「どうせなら子供同士話も合うと思った」と言う簡単なものだったらしいが、それは彼の運命を変えた。

その少年・・・祐一はこういった。

「王様なんて何も出来なくたっていい」と。

そして、王様は全てにおいて誰よりも優れていなくてはいけないと彼が言うと、祐一は笑い飛ばして否定した。

「もし、王様がそんなに優れているなら部下なんて必要ないじゃないか」

「そんな王様のしたでは逆に皆仕えにくいじゃないか」と。

彼にとって、その言葉は今までの人生を否定するような言葉だった。

しかし、それは何処か安心させるような言葉でもあった。

そんなこんなで一時間も話していると彼らはすっかり打ち解けていた。

そんな時祐一が言った。 「祐一公爵公子だなんて変な呼び方しないでも・・・もう少し軽い呼び方ないのかよ・・・」と

そんなことを言う人間は今までに会ったことがなかった。

今までに会った大人達はほとんどが自分の身分をひけらかし、自分を目立たそうとするものだった。

彼はしばらく考えると笑いながらこういった。

「では、祐一兄さんと呼んでいいでしょうか?」と。

その日、彼には兄が出来た。

それは、彼にとって、姉と同様に大切な存在となった。

第三話





その日以来、数日間水瀬侯爵や相沢公爵と一緒に現れる祐一に、彼はいろんな悩みを相談するまでになった。

その日、彼が話した悩みは魔術についてだった。彼の姉は上級魔法と呼ばれる呪文の制御に成功しているのに、 彼は一度も成功させたことがなかった。

勿論、上級魔法の制御などと言うものは大人の魔道兵でも大半の者が使えないような難しいものではあったのだが。

それを聞くと、祐一は答えた。「なら、俺が教えてやるよ」と。

そして、祐一は公爵の方を向いて笑った。公爵も話の内容から薄々何かを感じていたらしく、「しょうがないか・・・一度だけだぞ?」と言って苦笑していた。

10秒ほどの時間がたつと、祐一は片手を前に出した。

魔法力がその手に集中するのを感じる。とともに、彼は祐一が詠唱を行っていないことに気づいた。

「ブレイズ!!」

その時手から巻き上がった炎は、天を焦がすような勢いで巻き上がった。

それは、自分に手本として見せてくれた姉や、侯爵の物とはレベルが違いすぎた。

祐一は、「本来は使えないものだから、内緒にしてくれよ」と言ってさらに それと共に「このことバレちゃいけないの相沢家の最優先事項なんだよな」とも言った。

だから、彼はそのことを誰にも言わなかった。これは自分にとって初めての『男と男の約束なんだ』と。





祐一が公爵領に帰る日、彼は門まで送りに行った。

そこには、いつの間に仲良くなったのか、自分の姉も一緒だった。

祐一と姉が楽しそうに話しているのは、嬉しくもあり、少しだけ腹が立った。

それは「兄さんを独り占めしている」姉への思いなのか、「姉さんを独り占めしている」兄への思いなのか、彼にはまだ理解出来ていなかった。

ただ、彼は祐一と別れるときにこう言った。

「今度会うときは負けませんよ?祐一兄さん」と。

そして、祐一も笑って答えた。

「まぁ、無理しないようにな、一弥」と。

それから、数年が流れた。

それ以来祐一と会うことはなかったが、侯爵代理となってからの祐一の活躍は王都にいる一弥にも聞こえるほどだった。

それは彼にとっては誇りでもあり、また、身近にいる一番の目標となった。





「白騎士団出動!!」

大輔のその言葉に総勢102頭の馬が駆けて行く。

見送るものはいない。隠密に事を進める為に誰にも出撃日を言わずに出動しているからだ。

軽い鎧はつけてはいるが、兜はない。

武器は軽弓と槍。一般でいわれる軽騎兵である。

また。全員がかなりのレベルの魔術師でもある。

つまり、場合に応じて魔法、弓、そして槍でのチャージの攻撃方法を選択出来る。

これらの全てにおいて、小さい頃から訓練をさせて、その中からさらに優れた者だけを選び出す。

そして、選ばれたものは、白い鎧、白い馬、そして、騎士団の団員のみが持つ特別製の槍を配給される。

それが白騎士団の2000人であった。

2000人と言うと、少ない数に見えるかもしれないが、それは、一人の人間が指揮する最大限の数と言ってもいい。

数が多ければいいと言う訳ではないのである。

そして、今回この任務につく人数は100人。それに、祐一を加えて101人。

この100人は、王都での慎一や大輔の護衛を兼ねる(最も、この二人は護衛する必要等ないのだが)騎士団の中でもさらに最精鋭の100人であった。

「今回の任務はあくまで、鎮圧が目的。戦いにはなる可能性もあるがやりすぎないように」

大輔の声に周りに付く10騎長9人が頷く。10騎長とは、10人を束ねる長である。これが10人いれば100人の軍勢だ。

その上にさらに、10騎長10人を束ねる100騎長が19人。それを束ねるのが大輔と言うわけである。

大輔は、10騎長でもあり、100騎長でもあり、そして、全体の長でもある。

この10騎、そして、100騎は、戦闘になると、いつも先陣を切る、彼の手足であった。

大輔は、祐一の方をちらりと見る。

馬術も上達したな・・・と安心する。

祐一は、しっかりと戦闘を守り続けていた。

一族、団長は騎馬の先頭を走る。これが伝統であった。

「祐一、大丈夫か?」

この大丈夫か?と言う言葉には、そろそろ休むか?と言う意味も含まれている。

祐一は黙って首を振った。

蜂起が起きた町まで、普通の人間が馬で5日かかる。

多分、自分達の出発は、何処かで気づかれるはずだと思っていた。

5000人を1500人で完膚なきまでに叩き潰す程度の策士がいるのなら、その程度行わないはずがない。祐一はそう思っていた。

「遅くても2日、出来れば1日」

祐一は出撃前にそう言った。

もし、何処かで偵察隊に見られたとしても、罠を仕掛けてくる前に一気に近づいた状態に持っていくことが先決だと思っているのである。

祐一は、強く馬の腹を蹴った。

後ろで大輔が笑っているのを感じた。





「次は一体どんな軍隊がやってくるんだろうか・・・な」

一方その頃、蜂起した異端者達の間では会議が行われていた。

馬鹿な伯爵の軍勢は簡単に追い返すことが出来たが、次はもう少しは手強い軍勢が出てくるに違いない。

それが、リーダーである、霧島 聖の発言であった。

それに、青年と言っていいような男が頷く。

国崎往人、今までの作戦において、実践指揮を担当した男である。

元々、彼は旅人と言う身分で、別に異端者側の人間と言うわけではなかったが、今回の件では、彼には戦う理由があった。

それは、どう考えても個人的な理由ではあるが、彼の助けはこの集団には天から沸いたようなものであった。

彼は、国軍の誰よりも強かったのである。

だから、ここにいる全ての人間が彼を実戦指揮官として認めているのである。

そして、会議の内容は次に出てくるであろう敵軍と、その備えについてのものに変わっていった。

そこに、偵察隊の人間が一人駆け込んで来て、聖に耳打ちをした。

聖の顔が青ざめる。

「相沢公爵代理が・・・?」

それは絶望的な報告だった。

報告で来た事は唯一つ、数日前、相沢公爵公子であり、相沢公爵代理の相沢祐一が王都に入ったと言うこと。

わざわざ、遠い公爵領から公爵代理を王都に呼びつける理由なんて、自分達のことくらいしかないだろう。

「白騎士団が・・・・・?」

遥か昔、自分達人間を救ってくれたと言う神の末裔、神槍グングニル、それに、1000年以上の歴史において、無敗の名を誇る白騎士団。

その場を満たした雰囲気は「絶望」の二文字でしかなかった。

そう、一人を除いては。

「結局、白騎士団と言っても、率いているのは俺より年下なんだろう?それなら、別に怖がる必要もないじゃないか」と。

往人のその言葉には、自分達が伯爵の軍を破ったと言う自信が滲み出ていた。

その言葉に、場も盛り上がる。

勢いよく「やってやるぞ!!」と盛り上がる者と、それでもやはりショックを隠しきれないもの。

元々、彼らの蜂起は、永遠に戦い続け、勝ち続けると言う事が目的のものではなかったのである。

伯爵の軍をコテンパンに打ち破り、次にやってくる軍をもう一度山に引きずり込んで打ち破る。

二度もコテンパンに叩きのめせば、相手から和議を申し出てくるはずだ。と彼らは考えていた。

実際問題、相手がそれこそ、折原家のような、同等の国家相手ならまだしも、現王が異端者相手に和議を申し出るなんて事はありえないのではあるが、 それを知らなかったと言って彼らを責めるのは可哀想であろう。

何故なら、彼らにはそれしか道はなかったのだから。





彼らの町・・・・いや、町と言うより、村の集合体のようなものは、国からの過酷な税を必死に払い続けていた。

王に気に入られてやって来た斎藤辺境伯爵の治世下、彼らに課せられた税は今までのものとは規模が違っていた。

それでも、彼らは払い続けた。逆らえば家族が殺される。家族を失うくらいなら払った方がまだまし。そう考えてしまうのは臆病なのだろうか?

否、決して臆病とは言えないだろう。

これが、自分一人だけの問題ならまだしも、事はそれだけではないのである。

下手に逆らう人間がいると、軍は、その村全てを焼き払うのである。つまり、連帯責任と言うことだ。

いくら腹の立つことがあっても、自分のせいで他の全員に迷惑がかかると思えば、短慮は許されなかった。

しかし、それが急転する出来事が起きた。

伯爵は、王の受けをよくしようと、さらに、迫害をエスカレートさせ出した。

「女狩り」である。

目ぼしい女を、人妻であろうと狩り出し、その中でこれはと思うものを王の元に送っていった。

そして、それが村に近づいてきた時、彼らはついにキレた。

彼らの村には、目ぼしい「女」がいた。

まだ、少女ではあるものの、往人が居候していた神尾家の観鈴と、蜂起のリーダーである、霧島家の佳乃。

この二人を差し出せと言われたのである。

往人や、観鈴の母である晴子、佳乃の姉の聖は猛反対したが、それだけではなかった。

彼らの近隣の村々からも、反対すべしの声があがったのである。

元々、そのあたりの地域では、いつかこういうときも来ようかと・・・・・と、村々で男数人ずつの訓練が行われていた。

その連中が全員集まれば1500人にまでなった。

それは、全員が馬を乗りこなし、武器の使い方まで訓練されている軍である。

そして、彼らは立ち上がったのであった。





「・・・・・・・」

いまだ聖は迷い続けている。

自分にとって妹は自分の命なんかでは購えないほどの価値を持った宝である。

当然、妹が助かるなら死ぬのは構わなかった。

しかし、事は自分達のために集まってくれた1500人の命に関わる。

流石に、「私の妹の為に1500人死んでくれ」とは言えなかった。

「聖、ここで引いたら意味ないだろう!!」

往人が元気付けるように言う。

実際、既に犠牲者は出ていた。

自分達の軍勢から3人。

3人と言う数字を聞けば、たった3人と思う人も多いのだろうが、その3人にも友人もいれば家族もいる。

往人からすれば、一人として犠牲者は出さないつもりだったのだ。

ただ、10人程度が、伯爵の首を取ろうと深追いしすぎたせいで、3人と言う仲間を失ったのである。

「しかし・・・」

それでも聖の歯切れは悪い。

「異端者」と呼ばれる集団にとって、相沢家はただ強いだけの集団ではない。

常に自分達を庇い続けてくれる唯一の貴族でもあり、しかも、影ながら食料援助をしてくれていることも聖は知っていた。

しかし、そんな彼女の態度は周りをいらいらさせるだけであった。

既に若い連中のうちの数人は武器を持って気勢をあげていた。若いもの達にとっては、国の軍としてやってくる以上例え白騎士団と言っても 国軍と同じと言う雰囲気だった。既に彼女に止められる状況ではないのである。

「仕方ない・・・一応王都周辺にはスパイが何人も潜り込んでいる。彼らからの報告を聞いてまた作戦を立てよう」

だから、彼女もしょうがなくそう言った。

ただ、彼女の中には絶望的な気分が立ち込めていた。

それは、会議が終って、家に向かい、玄関についても晴れることはなかった。

しかし、玄関の前まで来ると顔を無理やり普段のものに戻す。

妹・・・佳乃に自分の苦しんでいる姿を見せるわけには行かなかった。

ただでさえ、自分の心優しい妹は今回のことを自分のせいだと思い込んでいるのだから・・・・・・と。

そして、そんな気持ちは、家に入ると打ち砕かれた。

「ただいま、佳乃。今帰ったぞ」と入った聖は机の上に置かれた紙と、そして、自分の最愛の妹が何処にもいないことに気づく。

聖は慌てて紙を開く。そこには書いてある文を読み、聖は走り出した。往人の下へ。



お姉ちゃんへ。

私が王都まで行ってくるよぉ。

そしたら、観鈴ちんの病気を治せる人も探せるかもしれないし、もう怖い人たちが来ることもないし。

う〜ん・・・我ながらいいアイデアだよぉ

そういうわけなので、心配しないでね。

佳乃より。

PS。往人君にもよろしく〜



その文を読み、往人も青ざめる。

そして「畜生!!なんのために戦いをはじめたのかわからねぇじゃねえか!!」と机を思いっきり殴りつける。

元々、彼にとってこの戦いの意味とは観鈴と佳乃を守る。とただそれだけの戦いでしかなかった。

「聖さん!!早く追いかけないと」

若い男衆が聖に詰め寄る。

しかし、聖は首を縦に振らなかった。いや、振れなかった。

聖からすれば、先ず自分が真っ先に飛び出したいくらいである。

しかし、今の彼女は1500人の軍勢、それに、その家族の命を預かる立場だった。

この立場の自分が私情に走ったら佳乃は許してくれないだろう。

そう思うのだった。

往人はもう一度、机を思いっきり叩いた。

彼の手から血が流れていた。

それは、聖の握り締めた拳からも流れていた。

血の色は、彼らを異端者と呼んでいる人間達と同じく赤かった。





「祐一、いくら急ぎたいのは分かるが・・・・・いくらなんでも飛ばしすぎだ!!」

道中、見かねて大輔が忠告する。

王都から出発してはや20時間。

いまだ部隊は少しとして休憩をとっていなかった。

ただ、そのおかげで既に行程の8割は進んでいた。

ここをもう少し過ぎれば、伯爵軍が罠に嵌まって大敗した山岳部に入る。

「もう少し、もう少しで山岳部に入ります。その手前まで行って野営しますからそれまでなんとかついてきて下さい!!」

馬に乗りながらの会話は自然と怒鳴り声になる。

結局の所二人とも疲れていた。

既に、騎士団の中にも少しずつ遅れ始めるものが出ている。

ただ、それは騎士団の人間がなさけないからではない。

祐一達が速すぎるのだ。

祐一が先頭に立ってのスピードは、普通の騎馬隊の速さとは段違いの行軍だったのである。

しかも、祐一達は人一人に馬一頭の編成である。

大抵、強い騎馬隊は、人一人につき、2〜3頭の馬を与え、乗り継ぎをさせながら駆ける。

当然、人を乗せながら走ると馬は疲れるのだ。

しかし、祐一達はそれをしていない。

「自分の馬、その一頭を生涯のパートナーとする」

それが昔からの伝統であった。





やがて、祐一が馬を止め、ゆっくりと下りる。

その時まで祐一について来れた人間は70人程度だった。

やがて、5〜6分もすると、遅れていたものも全員揃ってくる。

遅れてきたものは祐一と大輔の方を見て、「申し訳ありません」とうなだれる。

そして、全員整列すると、祐一はおもむろに口を開く。

「では、2時間交代で30人ずつ見張り。8時間後に出撃。それまでは皆さん体を休めていてください」

その言葉に全員が礼を取る。

白騎士団の忠誠は、どの時代においても王ではなく、相沢家のもの、ただそれだけに向けられる。

だから、相沢家の者はそれにふさわしい人間にならなければいけないのである。

祐一は忠誠を受けるに十分すぎると大輔は考えてた。

勿論、彼の忠誠も慎一と祐一の二人だけに向けられている。

しばらくすると、湯気が立ち始める。

野営の準備と共に煮炊きをしているのだ。

30人ほどは、山に入り、偵察を続けている。

念の為に、罠が仕掛けられていないか調査しているのである。

また、共に、水源を探すことも彼らの任務である。

万が一何かがあっても、水源の場所さえ分かっていれば生き延びることは出来るのだ。

やがて、食事が出来上がる。

スープの中に、小麦粉を練った物を入れただけの簡単なスープ。

味はいいとは言えないが、悪くはない。

祐一はどちらかと言えば「嫌いでは」なかった。その程度である。

当然全員慣れているので何も言わずに口に入れる。

野戦料理としては、一応肉を使った料理もあるが、当然騎馬での即時決戦用の部隊でそんな物を運ぶ余裕なんてあるはずがない。

今回祐一達が持ってきた食料は、せいぜい20日分である。

それで十分。それが祐一と大輔の共通見解だった。

見張り交代の時間が来ると、祐一も立ち上がった。

周りの者はわざわざ行かないでもいいと言ったのだが、祐一が行きたがった。

当然皆同じようにやるべきだ、と祐一は普段から考えている。

それがまた、皆に慕われる原因であった。





祐一は、茂みを書き分けで歩いていく。

少し道から外れたところを歩いた。

道を歩くと、見つかりやすい。当然、馬に乗って行動するなら道を移動するしかないのだが、徒歩で歩く場合は道を少し外れて歩く方が断然いい。

「こんな所を下調べもしないで攻め込んだのか・・・」

嘆息する。

深い山である。こんな山を攻めるに当たって策も立てず、下調べもせず、ただ数に頼った戦。

土地の利においても、策においても、そして、兵一人一人の強さにおいても劣っている相手にたかが3倍の兵士があるからと言って 勝った気でいる指揮官。

暗愚な指揮官の下で徴集されて戦う兵士ほど哀れなものはないのである。

「可哀想に・・・」

思わず呟く。

ここには、700人もの血が吸い込んでいる。それを祐一は実感すると共に、蜂起した連中に対して関心した。

「遺体を全部片付けたのか・・・」

普通、遺体はお互いが話し合って、自軍の死体は自軍で引き取り、埋葬する。それが礼儀である。

今回敗北した伯爵軍は、交渉すらせずに死体を置いて帰ったと言う。

それは噴飯ものの行いだが、それでも死体が全くないと言うことは、つまりは勝った方がしっかり片付けたと言うことだろう。

「なんとか話し合いで終わればなぁ・・・・・」

ここに来て、祐一はさらに彼らを殺したくないと思った。

貴族達が『異端者』と蔑む者達の方が『貴族』よりもよっぽど貴族らしい行動をしている。

(皮肉だな・・・)

その時、道を誰かが歩いて来る気配がして、祐一は身を強張らせた。








とりあえず、個人的には余りあとがきのようなものを書くのは得意ではないので、簡潔に。

この作品、魔法については、PSのゲーム、ブレイズ&ブレイドと言うゲームの物をそのまま使います。

自分で考えようかな?とも思ったのですが、実際問題、いくら考えても、私程度の頭で出来るものはゲームに毛が生えた程度のものでしかないので、中途半端にオリジナル でやるよりは、ゲームの物を使った方がいいものが出来る。と判断致しました。

設定については、現状においては書くかどうか迷っている段階です。

最も、読者の方が万が一にでも要望してくださるのなら速攻で書きます。ええ、書きますとも。

そして、ストーリー内容。これも、ある実際の歴史小説2冊を参考にさせて頂いております。

2冊とも、このような作品とは比べ物にならないような傑作です。正直、参考にしたとか言えるレベルではないです。

ただ、戦闘シーン等で「あ、この戦闘、あの小説のあの部分だ」なんて思ってくれる人がいたら、私としては作者冥利につきます。


また、今後の後書きのようなスペースについては、私自身が書くのが苦手なので、文章では説明し難い部分としての説明を入れると思います。

つまりは、戦闘での戦力図等ですね。

もし、単純に、往人と斎藤伯の戦闘を図式するとこんなことになります。


             ↓(霧島聖、神尾晴子500)

          
             ↑  

              ↑(徴集された民軍4200)

             ↑

             X(道封鎖) 

      
  (国崎往人1000)→X↑(斎藤伯軍、正規軍800)


矢印が軍勢の向きで、Xは基本的に戦闘ですが、それ以外の場合で使う場合はカッコを使って内容を説明させて頂きます。

とてつもなく、見にくく、とてつもなく書きづらいと言うことで正直きついのですが、何しろ初心者なものでもう少しいいやり方でこういう図を書ける方法を知っておられる方いらっしゃいましたら是非教えていただきたいです。

正直、今回のような単純なものならともかく、話が進み、軍勢が色々割れてくるとこんな書き方では洒落にならないので・・・・・・

それでは、長くなるのも難なので(既に十分長いですが)、この程度で失礼させて頂きます。