人物紹介(第一部)








人物紹介




公国側




相沢祐一<17>

現公爵で、神家最後の直系子孫。

優しさが故に帝国との戦端を開き、親しい者達との戦を決意する。

異端者と蔑まれていた者達を受け入れ、軍隊を整備させ、その勢力を増大させることに成功。

先の戦においては、名目上自ら戦場に出ることをせず、一人の異端者軍の指揮官として戦に参戦、大勝に一役買うこととなった。

隣国の王太子のように婚約者や、恋人を持つことをせず、初めて戦場に立った六歳の頃から常にたった一人で行動をしている。

周りの者からすれば孤高、かつ絶対的な存在。

女性が苦手な理由は子供の頃より政略結婚を目的とした縁談をいくつも申し込まれ、自分に近寄ってくる女性が全てそれを目的としたものだと思うようになってしまったことが原因。

ただ、その中で折原浩平の妹、みさおや長森瑞佳、上月澪等とは例外として親しい間柄。

最も、親しいと言うものはあくまで瑞佳や澪に対しては幼馴染。みさおに対しては妹に対するそれであるが。

最近では異端者の指揮官、霧島聖の妹である佳乃や神尾晴子の娘、観鈴に色々と付きまとわれていて、多少心を開いてはいるものの、感情としては結局妹に対するそれでしかない。

性格は二面性を持っていて、周りに対する態度は明るく、好青年としてのものではあるが、その内面には誰も踏み込ませることなく常に一人であろうとしている。

内政においてもほぼ全ての仕事を個人でもって行い、二百万の人口を持つ公国の治世を本人、及び二千の白騎士だけで行っている。

得意分野も苦手分野も特にない。

戦場に出る際は、愛槍『グングニル』と共に小刀を腰に数本、また馬に数本括り付けて、主にそちらで命を奪うことの方が多い。

また、剣を持つこともあり、その際に使う剣は祖父や伯父のような刀とは一転して、長さも幅も普通より大きい自分専用の巨大な剣を扱う。

どちらにしても、個人としての戦闘で物心がついてから負けたことはほとんどない。(7〜8歳の頃大輔に負けていた程度)

英雄公子と呼ばれてはいたが、慎一から委譲され今は公爵。




相沢大輔<49>

祐一の片腕と言うような名将で、祐一の数少ない理解者の一人。立場は世界最強の白騎士団の団長。

神家の血を引いてはいるものの、直系ではない為後継ぎとしての資格は持っていない。

祐一が生まれて、その後祐一の両親が亡くなって以来祐一の親代わりを務めていたものの、10年ほど前から帝国で与力として働いていた慎一が体調不良になったため、それに代わって帝国に滞在。

妻は昔いたものの、既に他界。

子供はいないが、本人は祐一を本当の子供のように大切に思っていて、何とか自分以外の人間に心を開かせたいと思って入るがそれが花開くことは、現在までにおいては、ない。

周りは彼を世界最高の騎士。と褒め称えるものの、彼自身がトップに立つことは決してない。

先代、慎一の下でも、祐一の下でも、常にナンバー2として存在し、それを支えることのみに尽力する。

立場を分かっていると言うこともあるし、本人自身が二人と自分では格が違うと言うことを実感しているからである。

性格は質実剛健。

得意分野は部隊として攻戦をさせれば右に出る者はいないと言われている。守戦も一流レベルでこなすものの、本人は好きではないと思っている。

間違いなく世界最高の騎士。指揮官としても、個人としても、そしてその精神においても。

ただ、全体として部隊としての戦闘より、個人、相沢大輔としての戦闘の方が好き。

戦場では常に戦闘に立って戦い、奪った命は数え切れない。

戦場に出る際は、祐一が魔力付与した刀『雪風』のみを持ち戦う。

弓矢も脇差も、雪風以外の武器は何も持たず、一本の刀だけで敵を打ち滅ぼす姿から『武神』とも呼ばれている。




折原浩平<19>

神聖王国王太子にして、総司令官。話の中では主役クラスの一人。

祐一の数少ない理解者の一人であり、また、兄弟のような間柄。

配偶者は、婚約者として長森瑞佳。

小さい頃から決まっていた婚約で、浩平自身はそれに反発し、あわや破談と言う所まで行きかけたが祐一が手を入れたりみさおが手を入れたりして復縁。

今では世界最強の凸凹コンビ等と言われている。

性格はおちゃらけているように見えていて、その内で常に人の一つ二つ先を読む。

五万の軍隊の総司令官と言う立場でありながら、自らその指揮を取ることは限りなく少なく、大抵の場合は里村筆頭将軍に全てを任せて雲隠れしてしまうものの、重大な事態が起きた時は先頭に立ってこれにあたる。

祐一とは軽口を叩きあいながらも互いのことを一番に信頼しあっていて、良く妹に羨ましがられている。

得意分野は部隊戦であれば攻戦の方が得意。守戦は余り経験がない。そういう事態になった時は守戦の名手、里村将軍に任せてしまうことが多いから。

そして、その場合は先頭に立って剣を振るう。

苦手分野は特になく、強いて言うのであれば事務仕事。

戦場に出る際の出で立ちは剣を一本。そして、小槍を一本馬にくくりつけている。

個人としては近接戦闘が得意ながら魔術戦闘も巧みにこなすことが出来るいい意味でのオールラウンダー。

祐一や大輔に言わせれば人間最強の戦士。

でも、祐一や大輔に勝ったことはない。

それと同様、その他の人物に負けたことも、またない。




折原みさお<16>

神聖王国王女。公式の立場としてはついていないものの、事務的に王の手助けをしたり、軍事面でも兄を手伝って輜重部隊を率いて戦場に立ったこともある。

小さい頃から死病を抱え、本人自身諦めていたが、祐一により治療され、今では体に何も問題はない。

その時に祐一が禁術を使ってまで治したことを聞き、祐一に詰め寄ったりしたものの、浩平に叱られ、今ではそれを受け入れて生きている。

祐一を想っているものの、祐一に根付いている物の正体も分かっているだけに、想いながらも妹のような、友人のような立場を受け入れている。

ただ、その中で祐一が実の妹のように大切にしてくれていることは分かっている為、それは嬉しく思っている。

国内においても、兄は勿論、兄の婚約者、兄の友人達とも仲は良く、国民からも慕われている。

性格は思慮深く、人の痛みに敏感。

戦場で戦うことはしたことはないが、兵一人一人を思いやって一つ一つの行動を起こすため兵からの信頼も厚い。

得意分野は治癒術法。

苦手分野は戦闘行為のほとんど。

兄と共に祐一の手助けに向かう。




上月澪<18>

話すことが出来ない。と言うハンデを持ちながらも将軍の地位に上り詰めた、浩平の信頼も厚い将。

私生活においては、みさおの一番の理解者。

軍事的には、立場は将軍、下級ではあるものの、貴族の令嬢でもある。

先の反乱軍鎮圧の指揮を茜の副将として執っていて、今では一人残って事態の解決を図っている。

浩平達が全員で役目を返上した今、王国の武官の中で最高位にある存在。

指揮は指示を画用紙に大きく書き、それを高くかかげることによって行う。

祐一とは小さい頃からの知り合いで、色々と複雑な関係でもある。




長森瑞佳<19>

長森伯爵令嬢、折原王太子の婚約者、そして、軍の副司令官。

小さい頃から決まっていた縁談も、相手が自分の想い人であったことから特に問題もなく受け入れ、常に浩平の半歩後ろを進んでいる。

なんだかんだと浩平に文句を言いながらも常にそれを心配し、気苦労が絶えることがない。

祐一に対しては恩人でありつつ、また、弟のように見守っている。

浩平の妹、みさおが彼を想っていることも気づいており、なんとかくっつけようと世話を焼こうとするも相手が相手なだけに成功は遠い。

王国最高の魔術師であることから観鈴と佳乃に魔術の手ほどきもしており、その素質には気づいている。

性格は優しく、そして相手を気遣うことを先ず第一に考える。

得意分野は浩平のサポート役に徹する事が多いことから事務仕事が得意。

戦場においては魔術部隊を浩平の親衛隊として動かすだけで、大軍を指揮することはほとんどない。

別に指揮能力がないと言うわけではないが、自分が表に出ることより周りの人間を立てることを主としている為である。

個人としては人間最高の魔術師の一人で、帝国の水瀬侯爵、倉田皇女と並び立つほどその知名度は高い。

苦手分野は個人としての近接戦闘。もっとも、大抵の人間相手なら近接戦闘になっても魔術を使えば負けることはない。




里村茜<19>

仕官学校で浩平の同期にして、同期の中でナンバー2の成績を修めた逸材。

ちなみに、主席は浩平。最も、試験官も多少立場を考慮した所もあると言われていて、指揮官としてどちらが優れているかは分からない。と言うのが一般的な評価。

最も、彼女自身は本気を出した時の浩平を見ていて、敵わないと思っている。

相沢家に対しては神家として尊敬の念を抱いていたものの、浩平と一緒に悪戯をしたりする態度から尊敬の念と言うより親しみの念の方が強くなっている。

立場は元は下級貴族の娘と言う程度でしかなかったが、娘が将軍位について、数々の武勲を立てたことから父親が子爵位を授かり、今では子爵令嬢。

幼馴染の柚木詩子とは戦場においてもいいコンビ。

性格は無口。それでいて優しさと冷静さを兼ね備えている。

得意分野は部隊指揮。特に守戦においては三国併せて右に出る者なし。と言われている。と言っても、本人はそう思っていないのではあるが・・・

苦手分野は個人としての戦闘。

武器の扱いも魔術も人並み以下でしかない為、戦場で先頭に出ることはまずない。




柚木詩子<19>

茜の親友で、仕官学校においても同期。

以来、軍に入ると浩平の直属の配下に茜と共に招かれ、グングンとつられて昇進。

勿論、実力も申し分ないものの、この年齢でこの地位に来たのは浩平や茜による所はかなり大きい。

浩平とは性格的にある意味合う。それが故に茜にかかる負担も大きい。

戦場においては、分隊指揮が主で、その数は多くて一万程度。

ただ、その中で、茜や浩平の期待通りの仕事をしてくれる存在は軍の中にあって極めて重要な存在。

得意分野も苦手分野も特になく、なんでもそつなくこなす。

父親は子爵で、彼女も令嬢に当たるのだが、周りの者からみれば信じられない。とよく言われている。




川名みさき<20>

浩平の一つ上の仕官学校における先輩。

盲目と言うハンデは背負っているものの、それを感じさせないくらい明るく、強い。

軍においては参謀官として相手の動きを予測。作戦立案においては何時でも司令官が満足の行く物を作り上げる。

戦闘行為は全く不可能ではあるものの、戦場で戦うこととは別の軍における重要人物。

戦場での指揮は出来ないものの、兵隊を動かす。と言うことは可能で、兵隊の移動を浩平達が休んでいる間に指揮することも多い。

ただ、食欲は無限大で、たった一人のせいで指揮官分の食料の計算が合わなくなったことがあるくらいに豪快に食べる。

得意分野は作戦立案能力で、苦手分野は戦闘行為。




深山雪見<20>

みさきの親友で、みさきが仕官学校に入学すると聞いてそれを補佐しようと自分も入学。

その中で頭角をあらわして、結局その世代の主席となり、軍に参加。その時から常に自分の直属の参謀としてみさきを部下に持っていたものの、浩平の部下となると同時にみさき自身も浩平の直属として引き抜かれる。

ただ、結果として浩平の直属の部下として互いに昇進し、今では軍において実質的にナンバー4。

丁寧な指揮が特徴で、相手の隙を見逃さず、攻める。

相手に隙のない時は無理に攻めることをせずに、本隊の攻撃に追従する用兵は、悪く言えば特徴がないと言えるかもしれないが、味方に余計な損害を出さないと言う点で極めて効果的。

得意分野は部隊指揮と事務。苦手分野は特にはないが、みさきのある意味独特な行動には悩まされてはいる。




七瀬留美<19>

仕官学校における、近接戦闘、つまり、個人としての成績で浩平につぐ成績を修めた戦士。

ある意味で浩平と気が合って、その推薦を受けて近衛兵に任命される。

と、同時に浩平の直接部隊である騎馬軍団の副官も兼ねている。

ただ、性格がいい意味でも悪い意味でも単純な為、浩平にはいつもからかわれていて、瑞佳には心配されている。

また、個人として乙女であることを目指そうとしているものの、それでいて実際の行動がそれと離れている。

得意分野は個人としての戦闘。

戦場に出る際は長い槍を一本、それに弓矢。

槍を使っての戦闘でなら王国の中でも最高の戦士であるものの、浩平が剣を使うとそれには及ばない。

兵の指揮は得意ではない。

と言うのは忍耐力に欠けているから。

唯、単純に攻戦を行わせるには強い、猛将。




異端者側




国崎往人<21>

流れ者の旅人。話の中では主役クラスの一人。

白とも銀とも言われる髪の青年。

たまたま辿り着いた異端者の村で少女・・・神尾観鈴や霧島佳乃と出会い、そこにしばらく滞在するが、そこで起きた揉め事に自らの意思で参加。祐一達によって異端者の纏め役となる。

斎藤辺境伯爵の軍は奇襲作戦によって殲滅させるも、その後やってきた祐一達に完膚亡きまでに叩きのめされる。

魔術師としての才能はないが、法術師の一族の血を受け継ぎ、魔力の空間制御をすることが出来る。見世物として用いていた人形劇はその表れ。

祐一から、公爵家の宝刀『雪花』を授かり、また、魔術の使い方も教わった。

性格は激しく、それでいて優しい一面もまた持っている。

観鈴から慕われ、また、佳乃にもある程度好かれてはいるものの、特に特別な人は現在時点ではいない。

得意分野は部隊戦闘より個人戦闘。部隊戦闘においては、騎馬軍の扱いは祐一に指導されて一人前。

祐一や大輔の協力を受けて作り上げた騎馬軍は強力で、その突撃だけで十分な威力を発揮する。

苦手分野は守戦。もしくは魔術師としての戦闘。

剣技においては、帝国最強の北川子爵公子と先の戦で一騎打ちを演じられるほどの腕ではあるが、勝負自体はついていない。

先の戦で先頭に立って敵を蹴散らしたことから帝国では『異端者の白い狼』と呼ばれている。

それが本人にとって光栄なことがどうかは別として。

現在は祐一の命を受けてクレスタへ移動中。

ただ、本人自身祐一の作戦には納得の行っていないところが多々あり、多少の不満を持っている。




神尾観鈴<16>

異端者の少女で、先の戦の原因となった少女の一人。

何時でも明るく笑える少女で、そして、強い少女。

死病を抱えていたものの、祐一のリインカーネーションの禁術によって完治。

往人を慕い、そして、祐一には好印象を抱いている。

往人を助けたいと思って相沢慎一に魔術の指南をお願いしたことから魔術師としての才能を発揮。

今では往人によって異端者の軍に魔術部隊を作り上げることを命じられている。

魔術師として最初に師事したのが相沢慎一。そして、その後相沢祐一に師事し、高等な術は使えないものの魔術師としての才能を開花させようとしている。

性格は優しく、それでいて寂しがりやな一面も持つ。

得意分野は魔術師としての戦闘。と言っても経験がほとんどない為そこまでの力はまだ発揮出来ない。

苦手分野はほとんどの戦闘行為。魔術部隊を作り上げるように言われてはいるが、本人自身人に命令したことがない為かなり苦労している。




霧島佳乃<16>

観鈴と同じく、異端者の少女で先の戦の原因の一人。

青いショートカットの髪でパタパタと興味を持ったものに付きまとう。

帝国との戦を控えた村で、たった一人で戦を止めようと村を出、帝国に向かう者の、途中で祐一達の軍に保護され、無事姉のもとに帰還。

祐一を好ましく思ってはいるものの、それが恋愛感情であるかは不明。

観鈴と共に魔術を慎一に師事することを願い、その素質を発揮する。

手に巻いていたバンダナは姉が強すぎる魔術の素質を帝国に狙われないようにする為のものであったが、本人の希望によって外す。

素質だけなら人間最高の魔術師の一人。ただ、経験がない為一流の魔術師と戦えるほどの実力はない。

性格は明るく、周りにも笑顔を作ることが出来る。

得意分野は観鈴同様魔術師としての戦闘ではあるが、彼女もまた、まだまだ戦場で魔術師として戦えるほどではない。

苦手分野はほとんどの戦闘行為。




神尾晴子<29>

観鈴の義母。そして、異端者の指揮官の一人。

娘を助けようと反乱に身を投じ、斎藤辺境伯爵の軍隊を殲滅。

その後反乱を鎮めるためにやってきた祐一達に降伏、公爵家預りの身として公爵家に連行される。

その後、祐一によって往人は異端者全体の纏めとなり、彼女自身はその副官的な立場で歩兵隊を預かる。

先に戦においては、寡兵ながら敵軍の中軍、石橋禁軍筆頭将軍の軍を見事に押さえ、戦勝に大きく貢献する。

娘を何よりも大切に思いつつ、それを表には出さない。

心の中では、娘を治療してくれた祐一に心から感謝している。




霧島聖<26>

佳乃の姉。そして、晴子同様決起時からの異端者の指揮官。

当初は妹一人を助ける為に全体を巻き込んでいいものか?と悩んでいた者の、周りから励まされて決意。

往人達の協力を受けて伯爵の軍を粉砕。後に祐一の来襲時に降伏を考えるも往人がそれを振り切って突撃。命を諦めた所を公爵家の計らいで公爵領に全体で避難。

往人を纏め役として推挙するも、代わりにそれ以上に大変な仕事を押し付けられ最愛の妹にも会えない日々が続いた。

先の戦においては敵軍の最精鋭、北川子爵の軍を寡兵で支え続け、祐一に戦功第一位と言われる。

個人としては簡単な癒しの術を使うことが出来、本来は医者。

軍事においては往人の片腕として、晴子と共に歩兵部隊約二万を大体半分ずつ率いている。

現在はクレスタの砦に篭っている。




帝国側

倉田一弥<16>

帝国の皇太子にして、侵攻作戦の総司令官。

祐一を兄のように慕い、だからこそ悩みながらも自分の立場を考えて行動する。

姉が祐一を慕っていることも知っていて、本人自身も祐一が義兄として自分の傍に居てくれることを子供の頃から願っているものの、それと逆の結果になってしまったことを悲しんでいる。

皇太子として、その能力、性格は申し分なく、祐一には「お前が皇帝になる時代になれば三国の間の柵もなくなるさ」と言われたこともある。

師は水瀬侯爵。ただ、本人は祐一自身を一番の目標としている。

魔術、武術、共に人並み以上にこなし、兵に対しても奢ることのない態度は兵からも好かれている理由。

得意分野も苦手分野も特にない所は祐一と同じ。

そして、特に浮いた話もない。

と言うのは、父親の女性関係にも多少の原因があり、また、祐一同様自分のこともろくに知らない女性が自分に近寄って来ることが多かったから。




倉田佐祐理<18>

帝国の皇女にして、侵攻作戦では第三軍の司令官を任される。

また、父親によって公爵位を相沢の家から無理やり委譲させられ、それが心痛となっている。

祐一のことを最初は父親の影響からか良く思っていなかったものの、付き合うようになると一変、今では想い人である。

だからこそ、侵攻には反対ではあるものの、立場が皇女である以上その責任を果たそうとしている。

個人としては帝国最高の魔術師の一人であり、師である秋子とも同等。

兵の指揮もある程度の経験を持っていて、秋子に言わせれば佐祐理達は十代と言う年齢の中においては三国でも十本の指に数えられる将。

性格は明るく、笑みを絶やさない所は誰からも好かれている。

弟に対しては昔は厳しく、立派な人間に育てようとそればっかり考えていたことから逆に傷つけていたことに気づき態度を一変。

今では普通の優しい姉である。

得意分野は魔術による個人としての戦闘。部隊を動かす時は部下を信頼することを主眼において行動する。

苦手分野はこれと言って特にはない。




水瀬秋子<36>

帝国最強の常勝将軍にして、三国での五指に入ると謳われる名将中の名将。そして、三侯爵家の一家、水瀬家の当主。

と言っても、軍功が他の将軍達と比べて大きすぎると言うわけではない。

と言うのは、勝ち戦においては、功を得るために無駄な攻撃をせず、むしろ友軍に功を譲るような戦をしているから。

立場としては軍内でナンバー2。ただ、国軍の将軍ではなく、あくまで一侯爵家の軍の大将と言う立場なので、国軍に対しての影響力はそこまで大きいものではない。

祐一の祖父、慎一には師事を受けていたこともあり、それと戦をすることに心を痛めつつも、心の中では好敵手と真っ向から戦うと言うことに武人として多少の喜びを感じている部分はある。

ただ、自分の物差しで計ってしまったことから祐一の実力を読み違えているところがある。

と言うのは、彼女にとってあくまで自分の甥は娘の名雪達と同じ線上にいる指揮官だと言うこと。

部隊戦においては、攻戦も守戦もこなす名将であり、個人としての帝国最高の魔術師の一人。

内政においても確かな手腕を発揮し、三侯爵家の中で一家だけ抜きん出た存在になりつつある。

苦手分野は特にない。




水瀬名雪<17>

水瀬侯爵公女。つまりは秋子の長女。

祐一とは従兄弟の関係で、小さい頃からの知り合い。

いつもほのぼのとしているものの、有事の際はしっかり自分の役目を果たすことができるだけの能力は持ち合わせている。

祐一に対しては従兄弟に対する親しみと、少なからず想っているものの、仲のいい従兄弟と言う程度の間柄。

先の戦においては、敗走しかけた軍の殿となって敵軍の侵攻を阻止。結果として、敵軍を帝国領内にまで侵入させることを阻んだ。

母親が偉大すぎる為目立ってはいないものの同世代の中では名将と謳われる将の一人で、仕官学校における成績も極めて優秀。

得意分野は特にはないものの、数百人単位を母親の分隊として動かした時に母親の期待を裏切ったことは一度もない。

妹のあゆに任せられた水瀬魔導兵団との連携も良く、帝国軍の中核の一人。

苦手分野は内政全般。と言うのは母がほとんどを行ってしまうので経験がないから。




水瀬あゆ<17>

水瀬家の養女で、立場上は秋子の次女。

うぐぅ。と言う口癖が自慢(?)の少女で、名雪の補佐役として秋子からも信頼されている。

率いる部隊は帝国最強の水瀬魔導兵団『スノウ』。

前回の戦ではその百人の部隊のうち数人の命を失うも、本国の予備部隊と合流。その力はいまだ健在。

鯛焼きと祐一を好きな少女でもあり、公的な立場にありながら町の鯛焼き屋の物を食い逃げする姿はある意味町の名物となっている。

魔術師としても一人前と呼べるような腕の持ち主ではあるが、祐一におちょくられる姿はとてもそのようには見えない。




美坂香里<17>

三侯爵家の一家、美坂家の公女。

17と言う歳でありながら、侯爵家を一手に取り仕切る逸材。

立場としては父親が侯爵ではあるものの、侯爵印の押された白紙の命令書を大量に保有していて、彼女が何かをしようとするとき一々父親の了解を取ることはないし、父親もそれを了承している。

部隊を率いても非凡な才能を見せ、部隊四千の中の騎馬隊は帝国内最強の騎馬隊。

また、戦略家としても秋子自身に一目置かれる存在。

得意分野は部隊指揮、及び内政全般。

部隊指揮においては、攻戦、守戦のどちらにも才を発揮。

水瀬秋子からは、久瀬有人と並んで自分の後継者のような存在になることを期待されている指揮官。

ただ、個人としての戦闘能力は低い。

祐一に対しては妹の命を救ってくれた恩人として感謝の念を持ち、一方で敵なのだ。と自分を納得させて戦場に向かおうとしている。




美坂栞<16>

香里の妹で、美坂家の軍内にあって事務仕事を取り仕切る事務官。

小さい頃は死病を抱えていたものの、祐一によって完治。

特にその時何を行ったのかは理解しておらず、王子様が助けてくれた。と言うような夢見がちな感想を抱いている。

水瀬家のあゆとは同じような立場から特に仲も良く、仕官学校でも同期。

戦場においては、看護部隊を率いて負傷者の治療に当たる、王国における折原王女のような存在。

得意分野は治癒術法の使用、及び事務仕事。

苦手分野は戦闘行為全般。個人としても部隊を率いても戦闘は苦手。




久瀬有人<17>

三侯爵家の一家、久瀬家の獅子。

香里同様、跡継ぎと言う立場の中で、その実権は侯爵と同様の者を持つ。

落ち着いた物腰と、冷静な戦略眼、緻密な指揮は十年上なのではないか?と思わせるほど大人びている。

女性達同様、祐一の友人として心苦しく想いながらも、武人として世界最強の軍隊と戦えることに喜びも感じている。

部隊指揮の基本を守戦において、とにかく自分の軍を破られないことを第一とする戦法を用いる。

その中で相手の隙を逃さず突く戦い方は秋子からも感嘆の言葉を送られたほど。

大衆的にも、仕官学校で香里といつも首席の座を争っていることを不思議に思う者はいない。




北川潤<17>

北川子爵家の跡取りで、帝国最高の剣士の一人。

剣の大会でも国内無敗で、その実力は『剣持つ麒麟児』とも言われている。

先の戦では、怪我を負いながらも敵軍の総司令官、国崎往人と熾烈な一騎打ちを演じ、祐一の横槍を受けて中断したものの、その実力は折り紙つき。

祐一や大輔と言った者達とは一度戦ってみたいと思っていて、今回の戦の経緯においてはかなりの不満を抱いているものの、戦自体には多少の高揚感を持って臨もうとしている。

部隊指揮は小隊を率いる程度であれば問題はないが、数百、数千の指揮は未知の領域である。

と言うのは、彼の父親が禁軍最強の将軍であり、彼自身はあくまでその最先鋒で戦うことを一とおいていたから。

戦に出る際の出で立ちは剣を一本、それに脇差を一本。それとは別に弓矢も持つ。




倉田一<65>

世界最大の帝国の皇帝。

相沢家の当主であった慎一に嫉妬を覚え、それが積み重なり憎悪に変わる。

国内においては名君と言われているものの、その公爵家に対する姿は狂人のそれにすら見えてしまう。

歳が五十になろうかと言うときにようやく生まれた一弥を溺愛していて、公爵家を潰そうという動きは息子の障害を取り除いてやる。と言う意識の存在も大きい。

先の戦と、その前からの一連の公爵家とのやり取りにおいて、コケにされたと憤慨している。




その他

相沢慎一<故人>

祐一の祖父にして、先代の公爵。

内政面でも、軍事面でも最高にして唯一の存在であり、それが故に帝国との確執を深めてしまったとも言われている。

祐一の、帝国に対する戦略を聞き、それに多少の読み違いを忠告しつつ、満足しながら死去。

愛刀『雪花』を往人に託したのは孫の罪の贖罪の意味も大きい。

そして、一番の罪は祐一にここまでの重荷を背負わせた自分だ。と責任感と罪悪感もまた抱えていた。

倉田一とは昔は兄弟のような間柄であったものの、それを信じる者は今ではほとんど存在しない。




小坂由紀子<37>

神聖王国の代理女王。

あくまで先代と浩平の間の繋ぎの代理王である。と言う考えを崩すことなく十年以上王座に付かず代理の王を勤めてきた名君。

どちらかと言えば、軍事面より内政に才能は傾いていて、浩平が軍事面で頭角を現してくるまでは、相沢大輔や祐一に頼ることも多く、神家として尊敬をしつつ、それとは別の恩義も感じている。

立場としては代理の王でありながら、小坂侯爵家の当主でもあるが、侯爵家の方は自分の代で閉じることや、みさおを養女として迎え、その家系についでもらう。と言うことも考えている。

と言うのは、結婚の申し込みを、自分が子供を生んだときに起こる騒動を考えて全て断っているから。

みさおと祐一が一緒になってくれることを願いつつも、本人達の意思を尊重することを第一と考えている。

浩平には厳しいが、みさおには甘い。




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