「やあ祐一君、久しぶりだね」
「死に掛けているという割には元気そうだな、切嗣」
冬木の一角、武家屋敷の縁側に腰掛けている衛宮切嗣の前には一時期弟子だった少年、沢渡祐一がいた。
竜王と少年・第2部
プロローグ「3年前、冬木にて」
義息子と同じ歳である弟子の遠慮ない言葉に切嗣は苦笑いを浮かべると話始めた。
「君を呼んだのは、士郎に魔術と戦い方を教えてほしいからだ」
「………」
「士郎は必ずアレに巻き込まれる。基礎を幾つか教えたけれど僕にはもう時間はない」
「アレとは何だ、何故巻き込まれると分かる」
「7人の魔術師と7騎のサーヴァントによる殺し合い…冬木の聖杯戦争、詳しい話はそこの本に記してあるから読んでくれ……僕は八年前の火事で士郎を助ける為とはいえ聖剣の鞘を埋め込んでしまった。だとすればおそらく士郎自身が触媒となってまた彼女を呼んでしまい否応なしに聖杯戦争に巻き込まれてしまう」
「だから力を付けさせたいと?」
「それと君に魔術刻印を渡しておく。士郎には君が必要だと思ったら渡してくれ」
「ふむ………なるほど、固有時制か」
祐一は魔術回路にダウンロードされた質量のない魔術書といえる魔術刻印に移植されたソレを読み出す。それは切嗣が最も得意とした魔術が刻まれていた。
「ありがたくいただいておく」
「ああ、君ならおそらく刻すら支配できる。僕の到達できなかった更なる高みに……」
そこで切嗣はふう、と一息付く。
「最後に…祐姫さんに会ったら、僕は貴女をずっと愛していた、と伝えておいてくれないかな」
「わかった、会えたらそう伝えておこう」
「ありがとう」
「祐一君」
切嗣はおそらく最後の気力を振り絞って小さな声を出す。
「御武運を」
「…あの世で会おう」
この日、冬木の町で一人の魔術師『時の御宮』がその短めの生涯に幕を閉じた。
その最後を看取ったのが黒衣の少年であることは本人以外知る者はいない……
それから3年後、物語は動き出す。
「固有時制・第三節、時よ我が意のままに…」
つづく
・・・あとがき・・・
竜王と少年第2部スタートォ!!
燐「ってまだ第1部は終了してないじゃないですか」
それは大丈夫、第1部(DC編)と第2部(FATE編)はそれぞれ独立した形で書くから
燐「まあ、貴方がそれでよいのでしたらいいんですけど」
ちなみに時期的には第1部終了後です
燐「その他にも月姫偏等の外伝物も書き始めてますし、大丈夫なんですか」
…共倒れしない事を祈ろう